プラス思考、北島康介選手に見る勝負脳のつよさ。

 北京オリンピック、2008811日の午後のトピックスは、北島康介選手の100m平泳ぎ、世界新58秒91での金メダルの記事一色であった。そして、12日の朝のワイドショーでも、北島選手の強さの秘訣を解説していた。水泳競技とは、各種目の泳法にのっとり、ある距離を出来るだけ早く泳いだ人が勝つというものである。そのタイムが一番早い人が一等、つまり、金メダルとなる。当たり前の話である。

 

 スピード競技であれば、基本的に車と同じである。出来るだけ軽いボディに大きなエンジンをつけ(馬力)、空気抵抗を少なくして、走ればいい。水泳の場合、足でのキックと腕による掻き出しにより、前にいく推進力が生まれる。そして、水泳であれば、水の抵抗、陸上であれば、空気の抵抗が、推進力を邪魔する。(推進力)―(抵抗力)の値が上の人が、早く泳げる人となる。水泳でも陸上でも、どの分野でも、トップアスリートたちには、国境はないはずである。メダルをもらえるのは、3人までである。肉体的や技巧的には、金メダルととる人と銀メダルを取る人と銅メダルを取る人との差はあまりないはずである。肉体的や技術的には、優劣の差はない。しかし、現実的には、金メダルと銀メダルとに分かれる。0.1秒でもおくれれば、金メダルはとれない。

 

 記録は破られるものである。今回、北島康介選手が打ち出した58秒91が、今後数年以上破られなければ、北島選手は今回の北京オリンピックでは、技術的にも肉体的にもNO.1であったことの証明になる。もし、数ヶ月や半年以内に、北島選手以外の選手によって、新たな世界新が樹立されたなら、今回の世界新は、北島選手の精神力が生み出した結果だといえる。つまり、技術的にも肉体的にも、その決勝の舞台に立てることができる人であれば、誰でもが、世界新や金メダルを取れる可能性があったことである。しかし、現実的には、それが出来たのは、北島康介選手、一人だけだったことになる。心と精神の強さが結果を導き出したことになる。

 

 北島選手が、再度強くなったのは、勝負脳を心がけるようになったからだと、連日の報道で伝えられた。勝負脳とは、簡単に言えば、プラス思考である。一切の否定語は使わないのである。これは、不安を完全に払拭するのである。もちろん、ほとんどのアスリートがこのようなメンタルトレーニングを実践し、自分が勝つときのイメージをつかむトレーニングをも実践しているはずである。その条件下で、勝ったのであるから、北島選手は、相当強靭な精神力を持っているはずである。

 たぶん、200mでも、北島選手はいい成績を残すであろう。日本人としては、自己のもつ世界新記録を塗り替えて、金メダルをとってもらいたい。それが、かなわなくても、北島選手には、与えられた結果に対して満足するはずである。もし自分より上がいることは、自分がベストであれば、相手は自分以上のベストを出したことになる。それで、敗れたのなら、しかたがないことになる。

 

 人間には、限界がある。北島選手も、永遠に第一線で活躍することはできない。どこかで、引退するはずである。北京の次は、4年後のロンドンである。北島選手は1982922日生まれである。次のロンドンの2012年では、29歳であり、もう直ぐ30歳になるはずである。北京オリンピックと次のロンドンオリンピックの間で、引退をする可能性がある。これだけの精神力を持続させることが、たぶん不可能だからである。いくら、勝負脳として、プラス思考として自分を追い込んだとしても、人間としての肉体の限界が時間軸に対してあるからである。

 

 北島選手は、歴史にその名前を刻まれることである。しかし、それでも彼はまだ若いのである。引退したとしても30歳前後であろう。その後、最低でも40年は生きることになる。北島選手のように頂点を極めた人間が、その競技から引退した後、どういうふうに、精神を切り替えて、生きていくのだろうかとふと、考えてしまう。もちろん、水泳やスポーツに関る仕事に就くことも考えられるし、そのネームバリューを生かして、スポーツタレントとして活躍することも可能であるし、スポーツ科学を極めるために、大学院に籍を置き、将来の教授の道を選ぶことも可能であろう。これは、北島選手だから、可能なのである。超トップクラスの選手だから可能なのである。世の中には、そういう人たちだけではないのも事実である。確かに、競技から離れてしまえば、水泳で世界的に早く泳げたとしても、(引退してしまえれば、)残酷だが、それがどうしたということになる。陸上でも同じである。野球でも、サッカーでも、どの分野でもそうである。個人の力量によって、なしえたことでも、引退すれば、その業界や分野で、残れなければ、つらい職業の選択がその後待ち受けているのである。音楽でも物書きでも絵描きでも、すべての分野で、個人の力量や個人のネームバリューで、一生、食べていければそれほど幸せなことはない。それが出来る人は、ほんの一握りの人である。

 

 ここから、すこし論点が難しくなる。たしかに、それが出来る人は一握りの人である。でも、それが出来たのは、諦めずにがんばったからである。同じ人間である。体力的に技術的に能力的に、それほど差があるとは到底思えない。では、その差は何かといえば、それが精神力や勝負脳、プラス思考である。結局、うまくいく人は、諦めずに、ブラス思考で前に行く人であり、うまくいかなかった人は、結局、不安やおびえで、プラス思考でいくことが出来ずに、否定的な言葉で自分を追い込み、あきらめていった人である。

 

もし、北島選手も、ずっと、勝負脳を持ち続けていけば、たとえ、引退したとしても、それなりの人生を歩むことだと感じる。

トラックバック(0)

このブログ記事を参照しているブログ一覧: プラス思考、北島康介選手に見る勝負脳のつよさ。

このブログ記事に対するトラックバックURL: http://www.nano3000.com/cgi-bin/movabletype/mt-tb.cgi/435

コメントする

このブログ記事について

このページは、中野満が2008年8月12日 15:29に書いたブログ記事です。

ひとつ前のブログ記事は「生産性向上が年功序列を支えた。アマの仕事人が増えたから日本はつぶれた。」です。

次のブログ記事は「中村中さんの「風立ちぬ」と堀辰雄の小説「風立ちぬ」の共通項」です。

最近のコンテンツはインデックスページで見られます。過去に書かれたものはアーカイブのページで見られます。

Powered by Movable Type 4.0