自民党加藤紘一元幹事長の「拉致被害者5人を北朝鮮に返すべきだった」発言には、驚いた。

 人には、絶対言ってはいけないことがある。心の中で思っていても、それが言葉としてでれば、それが一人歩きする。殺人を心の中で思っていても、それを実行したらどうなるかというのと同じである。自民党の加藤紘一元幹事長が、どんな真意があったのかわからないが、「拉致被害者5人を北朝鮮に返すべきだった」と発言したと報じられている。非公式に、友人との酒を飲んだたわごとであれば、えっと、聞き流すことができるかもしれないが、それでも、本気でそう思っているのなら、これはとんでもないことだといわざるをえない。

 

 色々な考え方があるだろう、北朝鮮という独裁政治国家体制である。もちろん、北朝鮮に行ったこともなければ、詳しい北朝鮮事情も知らない。ごく一般的な日本人として、北朝鮮関連の報道を見たり拉致に関する特別番組をみたり、新聞等で関連記事を読んでいる程度のことしかしらない。だから、北朝鮮と日本とがどんな関係か、水面下でどう動いているか等の裏事情もしらない。しかし、アメリカが北朝鮮に対してテロ国家指定解除措置をとろうとしているこの時期、加藤紘一元幹事長が、とんでもないことを発言するには、それなりの裏事情があるのかもしれない。

 

 拉致被害者の心情は、ただひとつである。拉致した被害者全員を即刻、帰せである。そして、その国家的な犯罪に対して、謝罪と処罰と賠償をしろである。「めぐみちゃん」を返せなのである。それが実現できるなら、後はどうでもいいことなのである。政治がどうの、経済がどうの、軍事がどうの、どうでもいいはずである。願いはたった、ひとつである。「めぐみちゃん」をかえせ、それしかないのである。めぐみちゃんは、ひとつの拉致された人全員の象徴である。めぐみちゃんをかえせというのは、拉致した被害者全員をかえせ、ということなのである。

 

 自分の子供が拉致されたら、普通は、だれでも、取り返そうとする。警察は、めぐみちゃんが北朝鮮の工作員に拉致されていた可能性が高いと判断していた。横田夫妻にも、それが分かっていた。しかし、国家間の壁があったために、どうすることも出来なかった。親として、"どうしているの、元気なの、寂しくないの、大丈夫"、そう、毎日、問いかけていたはずである。その消息もわからない、しかし、北朝鮮も完全に鎖国政策をとっていたわけではない、どこかからか、拉致された人の情報は、不確定的ながらも、入っていたはずである。政治家や、一部の人たちは、拉致された人の心情論で、国家間の折衝を動かすことはよくないという人がいる。しかし、世の中を動かすのは、やはり人の心でしかないのである。もし、日本が同じことをやったとしたら、日本は断罪されてしかるべきである。

 

 戦時下、人は狂う。敵を殺すことが、軍隊の仕事でもあった。やらなければ、やられる。信じられない世界である。当然、人を殺すことが当たり前の世界であれば、それ以下の行為はどこの国でも蔓延したはずである。暴行、略奪、誘拐、強姦、人間の凶悪犯罪のすべてが行われていたはずである。刑法的に一番重い罪は、殺人だからである。そこに、秩序も平和も理性も愛もない、ただ、やらなければ、やられるため、先に敵をやることだけが、すべてであったはずである。歴史を見れば、紛争や戦争の繰り返しである。戦争で、散華していった特攻隊の母親の気持ちと北朝鮮に拉致された被害者の家族の気持ちは、同じぐらいに哀しくつらいはずである。

 

 確かに、国交正常化をさせて、北朝鮮をより開放させることが、北朝鮮の独裁国家体制を変えるひとつの方法という考え方もある。中国も鄧小平が実権を握り、開放政策をとるまでは、毛沢東路線の独裁国家であった。しかし、開放政策をとり、海外の資本を取り入れ、香港が返還された後は、中国は元にはもどれなかった。市場経済を取り入れ、株式制度も導入した。オリンピックも開催される。確かに、今でも中国の公安の力は強いが、どこの国でも、公安という組織は存在するものである。日本でも公安は恐ろしいものである。

 

 最終的には、拉致被害者全員が帰ればいいのであるし、その手段として、一番最適なのはなんなのかという問題である。そして、北朝鮮の人々が幸せになるための方法論は、北朝鮮の人々で決めたらいいのである。

 

 確かに、北朝鮮との関係は難しい。どういうふうにしたらいいのか、誰もわからない。ただ、ひとついえるのは、拉致被害者の家族の人が生きている間に、なんとか解決しなければならないということである。時間が過ぎてしまえれば、すべてが、消えてしまう。可能であれば、自衛隊機を飛ばし、自衛隊の特殊部隊をつかっても、救出してもいいぐらいの話なのである。そのくらい、日本人にとって、拉致は許せない北朝鮮の国家的犯罪なのである。だから、どんな釈明をしても、加藤元幹事長の「拉致被害者5人を北朝鮮に返すべきだった」という発言は、その真意が別なところにあるにしろ、許容できないはずである。

 

 

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このページは、中野満が2008年7月11日 13:50に書いたブログ記事です。

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