さよなら、ブルートレイン急行寝台銀河、ひとつの時代のおわり

 連日、ブルートレイン急行寝台銀河の記事がマスコミをにぎやかにする。東京ー大阪間をゆっくりと走る急行寝台である。最後に、この寝台にのったのが、去年の11月だった。大奮発をして、憧れのA寝台の下段に乗った。のぞみのグリーン車よりも高い割には、その乗り心地は、悪かった。車体の老朽化が激しかった。あれだけ、あこがれていた24系のA寝台である。もう、そこには、子供の頃に夢みた空間はなかった。私も明らかに歳をとり、その旅情を感受する力が失われていた。私ももう若くはないと感じた。迎えの日が、どこかで見えたような気がした。

 

 3月15日のダイヤ改正で、銀河、なは、あかつきが、消え去る。ブルートレインで、残るのは、東海道、山陽道を走るのははやぶさ/富士だけになってしまった。ブルートレインは、主に寝台客車として、青にクリームのラインが入ったものである。寝台をメインにして作られたものであった。 私が子供の頃は、20系寝台特急のオンパレードだった。東京駅14番線、15番線ホームには、夕方から列車番号1のさくらを筆頭にして、一二時間の間に、みずほ、はやぶさ、富士、あさかぜ、瀬戸、出雲が、颯爽と並んでいた。同じブルーに塗られたEF65またはEF58の電気機関車が、先頭で、車両を引っ張っていた。

 

 初めて、20系の寝台特急(3段)に乗ったときは、うきうきしたものだった。寝台特急、20系、14系、24系の最大の特徴は、窓際にある通路に設置された収納式の補助椅子なのである。寝台の中に入るまえ、または、早朝時、ベッドから抜け出て、その補助椅子に座り、流れいく車窓の風景をみるのが、大好きだった。いまだに覚えている。興奮して寝れるわけがない。その空間にいることそれだけが、嬉しかった。旅の醍醐味である。ライトが消されて、車内が薄暗くなっても、多くの人は寝ない。中学生だった私は、補助椅子にすわり、ひたすら、外の風景を見ていた。それは、思春期における大人の世界への憧れと不安を車窓の風景と重ね合わせていたのだろう。旅の感傷であった。時が深まっていく。ブルートレインは、ひたすら走る。15両連結している車両は、カーブを走れば、先頭の機関車が見える。暗がりにともる車窓のあかり、それをじっと見ていた。そして、ところどころに民家が見える。その窓あかりを見つめる。あ、こんなところにも、人がいて、生活しているんだ、同じように生きているんだ、そんなことを強く感じたのである。昨日のように覚えている。

 時代の流れなのだろう。私も歳をとっていく。こどもも大きくなっていく。自分の中には、いまだに、少年の心が残っている。精神は変わらなくても、すこしづつ肉体は衰えてくる。それはしかたがないこと。それと同じように、ブルートレインも老朽化する。一斉を風靡した24系ブルートレインも、電車寝台581・583系も姿を消していく。そして、時代の中で唯一のこる電車寝台は、最新鋭の285系、サンライズ出雲、瀬戸だけになるのである。いずれ、ブルートレインはやぶさ/富士も廃止されるだろう。そう、いつの世も、そうやって、時代が塗り替えられていく。老兵は去るのみ、若者もいつか、壮年になり、そして中年になり、そして老年になる。確実に時間は過ぎていく。その流れを誰も止めることは出来ない。幕が下りてしまった劇場の余韻を楽しむのも、ほんの数分、下りてしまった後の残像は、人の記憶の中で生き残るしかないのである。その感傷にひたっても、いずれ、その感傷に浸る自分自身にも終わりがくる。

 

 もはや、24系のブルートレイン急行寝台銀河が、同じような形として復活することはない。東海道線を夜中に走るブルートレインは、はやぶさ/富士だけとなる。しかし、関西と東京を結ぶ交通機関は多種多様になる。飛行機、新幹線、高速バス等が主流となる。もはや、寝台特急で、旅情を楽しむ時代ではないのかもしれない。寂しいが、どうしようもない。

 

 そう、急行寝台、銀河は、今日で消滅する。これもひとつの時代の終焉になる。

 

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このページは、中野満が2008年3月14日 13:19に書いたブログ記事です。

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